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加速する自社開発 すべては〝リシャール・ミル〟を形にするために

リシャール・ミルで研究開発と設計を担うサルヴァドール・アルボナ氏は言う。「当社のムーブメント開発は、リシャール・ミル氏の意向により、モデルごとにひとつのムーブメントを開発することになっています」。同メゾンが創業以来、わずか15年でここまでの評価を得るに至ったのは、ミル氏の独創的なコンセプトと、APルノー・エ・パピなど、外部の優れたムーブメント開発メーカーとのタッグの賜物にほかならない。こうしたファブレスな開発にあっては、ひとつひとつのムーブメントが〝特注品〟のようなもので、「モデルごとにひとつのムーブメントを開発する」のは当然で、むしろ、そうしなければ、これまで同メゾンの名声を築いてきた名機たちは誕生しなかっただろう。だが、リシャール・ミルはこのやり方を、自社開発ムーブメントにおいても採り入れているのだ。


 例えば、リュウズを押すと文字盤が反時計回りに回転し、同時に時針が高速で回転するという独創的なデモンストレーションを開始するディジーハンズは、遊び心溢れる同メゾンらしい作品だが、搭載する自社開発ムーブメントCRMA3は、CRMA1をベースにしながらも、もはや別物としか言えない仕上がりだ。




オーデマ ピゲの修復工房には、今なお昔の手法が息づいている。19世紀の機械で部品を加工し、ランプで焼き入れを施していく。下に見えるのは、ユニヴェルセルがレストアに際して交換した部品の図面。それもCADによるものではなく手描きによるものである。「古典的なやり方を続けているのは、ジュウ渓谷の時計作りのノウハウを未来に継承するためです」。

 そして、この哲学は、今年発表の新作RM 63-02 オートマティック ワールドタイマーにも適用されている。同モデルが搭載するムーブメントは先述のディジーハンズと同じキャリバーナンバーを与えられているが、その機能は、ディジーハンズのムーブメントとはまったく異なる。そのベースムーブメントこそ、ディジーハンズと同じCRMA1であるが、ワールドタイマーを組み込んだ一体型のムーブメントであることは、一目瞭然だ。


 このワールドタイマーは、回転ベゼルを反時計回りに回し、時刻を知りたい都市名を12時位置に合わせると、回転ベゼルに内蔵された特殊な歯車が直接アワーホイールを駆動し、時針が連動して、自動的に現地時間が表示される。非常に利便性の高い機構を持つ。


「かつてAPルノー・エ・パピと共同開発したRM 58-01で培ったノウハウを今回の新作に投入しました。これはまさにその〝妹〟と言えます」(アルボナ氏)


 煩雑な手順を経ることなく、回転ベゼルだけでローカルタイムを表示する機構は、直感で操作できるほどシンプルそのものだ。これを、CRMA1をベースに内製化したリシャール・ミル。その戦略は、もうひとつの新作、薄型のRM 67-01を見れば、一層明らかである。