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ムーブメントを包む頑強なケースも、しっかりした安全ロック付きバックルも

水中での使用感はいかに

さて、今回ケッペ氏に潜っていただいた所要時間は合計50分。その大半の時間は、水深6m弱の湖底での作業に費やされた。ダイビング中にさまざまな魚類と水中植物に遭遇できるのは、とりわけエキサイティングだろう。だが、今回の目的は水中探査ではない。ケッペ氏には、ポントス S ダイバーの操作性を、これでもかというほど吟味していただいた。

彼も多少予測していたが、おおかたの予想通り、安全ロック付きブレスレットは、爆破にも耐え得るかのごとき強固さを見せた。そして、両面無反射コーティング加工が施された風防は、水中ライトの明かりを受けても照り返しを防いだ。多くのダイバーモデルでは、腕を軽く傾けた角度から見た時には読み取れなくなってしまうことを思うと、このモデルの風防は効果的だと言える。そして、ケースの防水性は格段に高い。仕様データに書かれている深水域(60気圧防水/600m防水)にも対応させるには、これくらいしっかりした作りであるべきなのだろう。


それでは、ポントス S ダイバーに欠けているのは、インナーベゼルの細かな目盛りだけなのだろうか? これ以外にことに気になったのは、秒針に夜光塗料が施されていないという点だ。というのも、潜水用具のドイツ規格および国際規格では、明るさの不十分な深さにおいて、計器の操作中か否かにかかわらず、表示は常に明瞭に判別可能であるべしと規定されているからだ。とはいえ、夜光塗料についてはあまり過敏にならなくても大丈夫だろう。あえて言うならば、この時計は自動巻きなので、完全に停止していた状態からすぐに潜らない限り、30分なり60分なりの潜水の間中、作動が止まるかもしれないという心配は、よほどの慎重派以外はまず気にしなくてもいい。時計が問題なく動いてさえいれば、ダイバーは常にライトを携帯しながら潜るため、読み取り不能に陥ることはまずないはずだ。なにしろ暗い水中で細かい表示を見分ける際、地上と同じわけにはいかないのは、この腕時計に限った話ではない。中間価格帯、あるいはもう少し下の価格帯の潜水用電子装置では、ディスプレイに暗がりへの対策がまったく取られていないものも多く見受けられる。

つまり、秒針に夜光塗料が使われているかどうかよりはるかに重要なのは、普通に見た時の基本的な見やすさなのだ。それを踏まえた上で検証すると、ポントス S ダイバーは必ずしも視認性に優れているとは言えない。分・秒の60分割を示すバーインデックスは5分置きの太いインデックスと同じ長さに揃えられているため、薄明かりの下ではメリハリがなく紛らわしくもある。その上、分針がやや細過ぎて、文字盤全体の中で埋没気味だ。ぱっと見た時に、分針にはもっと存在感のある面積を占めているのが望ましい(これは夜光塗料の範囲に関しても同じだ)。形状も、明らかに時針とは違うと認識できるくらいの差異がほしいところだ。しかし、ボリュームを抑えていながらも赤い縁取りを加えているのは、実用することを念頭に置いた見やすさへの配慮だろう。


ともあれ、実際に湖底に潜って使用したケッペ氏の感想を聞こう。氏曰く、ポントス S ダイバーは、ダイバーズウォッチに求められることをきちんと踏まえた、まさにスポーツウォッチたる存在だという。バックルもしくはインナーベゼルひとつとっても、手間が掛かった作りだと分かる。ヘリウムガスのエスケープバルブが備わっていることも、現実にはプロダイバー以外の者には明らかに使われないものであっても、スポーツウォッチとして見かけ倒しではないことを証明していて好ましい。ただし、ディテールについては改善の余地があるだろう。何よりも水中の視認性が向上するよう期待したい。