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SIHH2016見て歩き:ジャガー・ルクルト 文・菅原 茂

 

時計展示会の会場を駆け回っていつも思うのは、自分にとって時計は大きく分けて二つに分類されると。一つは、技術やデザインなど、新しいトレンドを紹介するための時計だ。もう一つは、取材者という立場は別として、“手に入れたい”“着けて楽しみたい”と思わせる、物欲を刺激するような時計である。

今年(2016年)のSIHHで出合った時計の中でそれにあたるのが、ジャガー・ルクルトの「レベルソ」だ。「レベルソ」誕生85周年を機にコレクションをリニューアルしたが、クラシカルでシンプルなデザインの採用や、このところのオーバーサイズを見直して程よいサイズへと戻したところが非常に印象的だった。ある意味このリニューアルは一種の先祖返りにも思われたが、それこそがジャガー・ルクルトの狙いなのかもしれない。あくまでも推察の域を出ないが、目新しさを狙って過剰な演出に走るよりも、名声を確立する「古典」の良さを再認識してもらいたいとの考えのようだ。このような原点回帰を歓迎したのは、筆者一人ではなかっただろう。

さて本題に入ると、「レベルソ」の新作の中から“欲しい”という目線で選ぶなら、なんといっても反転ケースに両面にダイアルが備わる「デュオフェイス」の3つのモデルである。まず、「レベルソ・トリビュート・デュオ」は、表ダイアルに歴史的な「レベルソ」からインスピレーションを得たヴィンテージ・デザインを採用し、裏ダイアルは第二時間帯表示になっていて、基本的に初代「デュオ」のデュアルタイム機能を踏襲する新装モデルとも呼べるが、装着感が向上したケース構造や第二時間帯のタイムゾーン修正ボタンの改良などに工夫が凝らされ、明らかに進化版へとアップデートされている。ミッドナイト ブルーの美しい色づかいも好ましい。

次は「レベルソ・トリビュート・カレンダー」。伝統的なコンプリートカレンダーを搭載する表ダイアルは、歴史的な名作に通じる復古調のデザインだけでも大いに魅力的なのだが、素晴らしいのは、裏ダイアルが「デュオ」特有の第二時間帯表示になっていて、これもまた、ちゃんとデュアルタイム・ウォッチになっているところ。時計愛好家が喜びそうな演出をさりげなく盛り込みつつ、「レベルソ」の多面的な魅力を伝える秀逸なモデルに思える。